骨のカチャーシー
英訳詩が銅版画、国際交流展に
芝 憲子
このほど私の詩が銅版画になり、英訳詩が「2021版と言葉・版画集による国際交流展」に出されました。50人余の版画集は国内外一〇大学に寄贈、保管されます。版画家の比嘉かな子さんは1971年沖縄に生まれ、沖縄県立芸術大卒、ベルギーの美術大や、パリのアトリエ・コントルポワンで学び、2010年からベルギー在です。沖縄に心を配り、私の詩に注目されたのも南部の土砂問題からで、版画はガマフヤーの具志堅隆松さんにもさしあげます。復帰50年記念で、今までで一番力を入れた作品とおっしゃり、大変ありがたいです。(英訳 比嘉かな子、竹田秀輝)
(ここに、銅版画の写真を入れようとして、うまくいきません。
あとで別記事にして入れられるとよいですが。詩だけ先に入れます。)
詩 「骨のカチャーシー」
南部の野山で
あけがたに
ずらりとそろって
カチャカチャカチャ
骨たちが踊る
カチャーシー
半分になった頭蓋骨ふりふり
苔の生えた足の骨曲げて
カチャーシー
これは俺の腕の骨ではない
でも今となってはどれでも同じ
どこの誰だか
気にするものなどいはしない
とにかく骨が集まって
踊ることだけが俺たちの楽しみ
みすぼらしい姿を忘れ
木の枝を踏み鳴らして
ひたすら踊る
カチャカチャカチャ
太陽が輝き出すと
草むらに横たわらねばならない
それから始まる長い長い一日
でも俺たちはいつまでもここにいる
ここで殺されたと証明するために
殺したやつらを忘れないために
やつらが今何をしているか知るために
簡単に拾われて
神社にまつられたりしない (英訳ここまで)
そのうち生きている人たちと踊るのだ
野山から街に繰り出して
俺の得意な三味線(さんしん)をかき鳴らして
島いっぱいにカチャーシー
そうなったら矢も楯もたまらなくなって
島までドッカドッカと踊り出すだろう
さぞ無様なかっこうだろう
明日(あす)の踊りを楽しみに草むらに横たわると
生きている人はのろのろと起きあがり
つらい昨日(きのう)を思い出す
それから始まる短い一日
(1974年詩集『骨のカチャーシー』、2021年『1/2』65号より)
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