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2021年06月19日

南部の土砂

ボールペンの芯
                  芝憲子


小学校に入学したとき
母が
新しい鉛筆をナイフで
それはそれはきれいに削ってくれた

それから削り方を教えてくれた
はじめデコボコでまるできたなかったが
だんだん上手にけずれるようになった
芯は紙の上に立ててナイフでとがらせた
なんとかできるようになるとうれしかった
ナイフもいつも筆箱に入れた

中学生のころ
社会党の党首 浅沼稲次郎が
一七才の少年に刺されて亡くなった
学校にナイフを持ってくるのが禁止された

いま 
鉛筆も万年筆もほとんど使わなくなり
なんでもボールペンだ

ガマフヤーの具志堅さんは言う
南部の土砂から
人の骨を取り出すのはむずかしい 
政府が「業者にさせる」と言った段階で
すでに遺骨を区別する気がないのだ
土砂をショベルカーですくって
骨を取り分けられるはずがない
慣れた人がていねいに見てもむずかしい
子どもの指は
ボールペンの芯ほどの細さだ と

細い 軽い 子どもたちの骨
お母さんと手をつなぎ 
鉛筆をもちたかった指 指 指

書けなくなったボールペンを捨てるとき
透き通った芯が 
きゅっと 音をたてる気がする

  (『1/2』第64号より  2021.6月 )


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Posted by NORIKO at 20:51│Comments(2)
この記事へのコメント
お久しぶりです。ボールペンの芯ほどの細さの骨の子供達がどんなに無力で尊まれるべき無垢な存在だったかと思いました。南部の土砂の遺骨の存在がこれまで私たちに沖縄戦を語り、慰霊を忘れず、平和への希求をもたらしてきたこと忘れてはならないと思いました。
南部の土砂の件が問題になってすぐ、「骨のカチャーシー」の詩が頭によみがえって離れません。
Posted by 比嘉かな子 at 2021年06月21日 05:02
比嘉かなこ様   
   
   芝より (目下パソコンが思うようにならず、この、下下にい れることができません。お気に入り、も消えてしましました) お元気で。

本当におひさしぶりです。遠くで見てくださったのでしょうか。ありがとうございます。
ガマフヤーの具志堅さんは、再びハンストをはじめたので、きのう行って、この詩が
入った詩誌をさしあげてきました。今日から糸満でハンストなさるそうです。
Posted by NORIKONORIKO at 2021年06月21日 10:48
 
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